大麻は体にどのような影響を及ぼすのか?大麻の健康上のメリットを徹底解説
大麻を使用することによる健康上のメリットは、ストレス解消から発作の軽減まで、多岐に渡ります。大麻の薬効は、大麻が作り出す独自のカンナビノイドからきており、大麻を摂取するとこれらのカンナビノイドは、人体を構成する細胞と結合します。
これらの化学物質と人間の細胞の相互作用は、広範囲にわたり、有益で驚くべき健康効果に貢献しています。今回の記事では、鬱からPTSDに至るまで、大麻の様々な健康上のメリットと、日常生活で大麻をどのように利用できるかについて解説していきます。
大麻については以下の記事で詳しくまとめています。
⇒大麻とは?成分や植物としての「特徴」「効果」「法律」についてのまとめ
大麻の一般的な健康上のメリット
まず初めに、大麻が人体に与える影響については、まだまだ研究が必要だということを伝えておきます。大麻は、最近まで世界的に禁止されていたため、大麻と大麻に含まれるカンナビノイドに関する研究は、何十年も停滞していました。
カナダのような国での合法化の動きは、大麻の新時代への扉を開きましたが、日本は、研究目的で大麻を栽培することを依然として禁じられています。残念ながら、こうした障害があるため、日本で大麻を研究することはとても難しくなっています。
十分な研究がなされなければ、大麻に関する健康上の主張の多くは、科学的証拠に裏付けできません。しかし、初期の研究は、大麻の可能性に光を当てました。この初期の研究は、人体と大麻との関係をより深く理解するために必要不可欠です。
これまでに得られた研究データに基づいて、健康に対する大麻の一般的なメリットをいくつか紹介します。
睡眠促進作用:睡眠のための大麻
あなたが不眠症で悩んでいる場合、少量の大麻でも睡眠の助けになる可能性があります。1980年代に実施された研究[1]では、大麻の主要な精神活性物質であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)がメラトニンの分泌を刺激する可能性があることが明らかになっています。
メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンであり、動物から人まで季節のリズムや概日リズムの調節作用をもつホルモンです。日中にはメラトニンの分泌が低く、夜間になると、分泌量が10数倍に増加する日内変動が生じます。
また、大麻を摂取するとメラトニンの放出が誘発され、眠気を感じることがあり、また大麻草の香りも眠気を催すことがあります。ミルセンと呼ばれる、ムスクの香りを持つ分子がその代表です。
ミルセンは、テルペンの一種であり。ホップやレモングラスにも含まれ、リラックスする作用があると共に、THCの向精神作用を高めることもあります。
テルペンについては下記の記事で解説してますので興味があれば見てみて下さい。
⇒CBDに書いてある『テルペン』って何?大麻に含まれているテルペンを理解しよう
一方で、大麻が睡眠に及ぼす影響については、いくつかの議論があります。
例えば、ある研究[2]では大麻がノンレム睡眠を改善することが示唆されていますが、一方でTHCを高容量摂取した場合は、逆の作用を引き起こす可能性があります。
ノンレム睡眠は、睡眠サイクルの中で最も深く、最も回復力のある部分です。しかしTHCを摂取しすぎると、長い目で見たときに疲れが取れなくなる可能性があります。
この研究はまた、大麻がレム睡眠を制限する可能性があることも示唆しています。レム睡眠とは、鮮明な夢で、外部からの感覚がブロックされ、眠りの浅い状態。脳は、この間に記憶の整理を行っています。
大麻が睡眠の質を向上させる効果があるかどうかについては、科学者の間でも議論があります。最適な睡眠をとるには、THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)の両方の組み合わせが最適だと言われています。
大麻と睡眠に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
抗うつ作用:ストレス軽減のための大麻
ストレスほど気分を害するものはありません。上司を相手にしていようと、家庭問題を抱えていようと、現代のストレス社会ではどこにいても間違いなく多くのストレスがかかります。
このことを理解するには、大麻の働きについて少し知っておく必要があります。大麻が健康に影響を及ぼす理由は、人の身体には、エンドカンナビノイドシステム(ECS)が備わっているためです。
エンドカンナビノイドシステムは、以下のような機能を持っており、細胞同士のコミュニケーション活動を支えている重要な身体調節機能です。
- 食欲
- 痛み
- 免疫調整
- 感情制御
- 運動機能
- 発達
- 老化
- 神経保護
- 認知と記憶
また、エンドカンナビノイドシステムは、ストレスに影響を受けます。その理由として、ECSは身体の困難な状況に対処し、ストレスに反応するシステムのためです。
エンドカンナビノイドシステムは、体を最適なバランス、すなわちホメオスタシスの状態に戻すのを助けます。小規模な臨床試験がこれを証明しました。
2017年、研究者は被験者にストレスの多いシナリオを下記のように設定しました。
- 第一は模擬就職面接
- 第二はソリティアのゲーム
毎回、低~中量のTHCを事前に摂取した参加者は、ストレスの徴候が減少し、各実験中により快適に感じました。しかし、高用量では、THCは逆の効果を示しました。
最終的に、研究者のEmma Childs氏は、大麻がストレスとうまく戦うかどうかは、どのくらいの量を摂取するかにかかっていると指摘しています。
彼女はプレスリリースで以下の様に説明しています。
「我々の見解は、大麻がストレスを軽減し、緊張と不安を和らげるために使用されるという一般的な主張を支持しています。一方で、高THCを摂取した参加者が、試験中に不安、否定的な気分の増加を報告したことは、THCが逆の効果も生じ得る可能性支持しています。」
鎮痛作用:疼痛緩和のための大麻
大麻愛好家であれば恐らく、大麻は痛み止め効果があることを知っているでしょう。
すでに医療大麻患者の調査では、消費者は処方された鎮痛薬よりも大麻を選択していることが示唆[3]されています。
がん患者を対象とした複数の研究[4]では、大麻の薬剤が、疾患に関連する痛みを効果的に軽減し、化学療法などの困難な治療に対する患者の忍容性を高める可能性があることも示唆されています。
一方で、ランセットによる最近の大規模な研究[5]によると、大麻の喫煙と疼痛緩和との間に相関関係は認められませんでした。
しかしこの研究は、医療大麻プログラムの合法化に先立って実施されたため、この研究は、大麻を摂取した患者が、医療用に栽培された大麻を使用するのではなく、たまたま自分の持っている大麻を吸っていたということを意味します。
医療用で栽培される大麻には、さまざまな製剤があり、カンナビノイドとテルペノイドが特徴的です。しかし、睡眠やストレスと同じように、THCの過剰な摂取は、痛みを和らげることはできません。
実際、THCを大量に服用すると、ある種の痛みに敏感になることがあります。最適な効果を期待している場合は、低THCから初めて徐々に増やしていくのが推奨されています。
食欲増進作用:食欲不振のための大麻
大麻の食欲を刺激する性質は、かなりの治療効果があります。マウスを使った研究[6]によると、THCの含まれている大麻は、嗅覚を高め、それによって食べ物をより魅力的にする可能性があります。
同時に、大麻は多幸感を高める神経伝達物質の放出を誘発し、より多くの楽しみを体験できるようにします。
頻繁に大麻を使用している場合、耐性がつくため、この反応が一時的に鈍くなることがありますが、大麻を使用してお気に入りの食べ物を食べるのことは、とても素晴らしい経験となります。
また、吐き気や食欲不振に悩まされている人にとって、
という欲求を再び呼び起こす作用は、非常に重要です。
「大麻が食欲を増進させる」という主張に少し科学的根拠を加えると、2018年にがん患者を対象に実施された調査[7]では、大麻の使用が承認された患者の92%が、大麻によって食欲が改善されたと感じていることがわかっています。
さらに、すべての患者が「大麻が症状の緩和と生活の質の向上に役立つと感じている」と報告しました。
大麻の食欲増進作用については以下の記事で詳しく解説しています。
⇒大麻を使ったときに起きる食欲増進作用「マンチ」とは?空腹をコントロールする方法も解説!
抗炎症作用:炎症のための大麻
歯を白くしたり傷口をきれいにしたりするのに使うものも、損傷に反応して体内で作られます。この炎症反応は、細菌や微生物の感染から身を守るという点では驚くべきものですが、慢性炎症は、時間の経過とともに身体の組織を変性させてしまう恐れがあります。
過酸化水素や一酸化窒素のような毒素は、感染に反応して免疫細胞から放出されます。炎症誘発性化合物は、免疫細胞を活性化して特定の領域に集合させ、放出します。
免疫反応が長期間持続すると、これらの有害な化学物質のすべてが組織を悪化させ始め、自分の細胞にダメージを与え続けます。炎症は感染後の生存を維持するための生命維持機能である一方、混乱を招く炎症反応は大きな問題です。
幸いなことに、大麻の強力な抗炎症作用を明らかにする研究が増えています。向精神作用のないCBD(カンナビジオール)含有量の高い品種および製品は、炎症に対して最も有益であることが明らかになっています。
例えば、ある研究[8]によると、CBDが、炎症を引き起こす一酸化窒素の産生を阻害できることが明らかになっています。大麻の強力な抗炎症作用のおかげで、大麻に含まれるカンナビノイドから新しい抗炎症薬を作るために現在も研究が行われています。
この研究はまだ進行中ですが、大麻の抗炎症作用は非常に強力で関節炎からうつ病まであらゆるものに炎症の一面があります。この炎症を、安全かつ効率的に治療する方法を見つけることは、多くの患者にとって人生を変えることになるでしょう。
大麻の公に認められた健康上のメリット
現在、大麻に含まれるカンナビノイドは、さまざまな病気の治療薬として研究されています。上記セクションでは、いくつかの大麻の一般的な薬効特性を説明しましたが、医学研究者は、大麻が特定の病気にも役立つという強力なデータを集めました。
2017年、米国科学・工学・医学アカデミーは、大麻の健康への既知の影響をまとめた総合的レビューを発表[9]しました。米国科学・工学・医学アカデミーの出版物は、大麻のバイブルと見なされるのではなく、医療用大麻について私たちが自信を持って言えることを強調しているにすぎません。
特定の条件に関して、これまでのところ大麻が最も有効だと思われるのは、次のような場合です。
がんの症状に対する大麻
医療大麻は・痛み・吐き気・嘔吐などを抑制する効果があり、化学療法の全身衰弱を緩和するのにとても役に立ちます。実際、THCの合成薬は、既にがん患者に処方されています。
その薬はドロナビノール(マリノール)と呼ばれ、大麻に含まれるTHCの人工バージョンです。
多発性硬化症のための大麻
サティベックスは、多発性硬化症に関連する痙縮および疼痛の治療のためにGW Pharmaceuticalsによって開発された薬です。
多発性硬化症(MS Pゴシック)は、神経系の変性疾患です。サティベックスは、大麻の主成分であるTHCとCBDを組み合わせて使用します。
これらの大麻に含まれるカンナビノイドは、神経細胞の炎症を軽減するだけではありません。
以下のような他の変性疾患の患者にどのように役立つかを探すためにとても重要です。
- パーキンソン病
- ハンチントン病
- アルツハイマー病
てんかんのための大麻
大麻に含まれているカンナビノイドは、神経系にリラックス効果をもたらします。大麻は、リラックス効果が強く、てんかん患者に役立つ可能性があります。アメリカ食品医薬品局は、アメリカで初めて大麻由来の医薬品であるエピディオレックスを承認しました。
エピディオレックスは、CBD(カンナビジオール)を精製したもので、向精神作用はありません。
また、CBDは、安全で強力な抗けいれん薬であることがわかっています。少なくとも一つの臨床試験で、大麻に含まれるカンナビノイドは、難治性てんかん患者の約47%で発作を減少させることに成功しています。
現在、アメリカでエピディオレックスは、重度のてんかんである「ドラベ症候群」または「レノックス・ガストー症候群」の患者に使用可能となっています。
日本でも4月にエピディオレックスなどの難治性てんかんの治療薬の治験が例外的に認められ大きな話題になりました。
大麻のあまり知られてない健康上のメリット
医療大麻がこれほどまでに世界中で注目を集めている理由はたくさんあります。現在、大麻が医療において注目されている分野をいくつか紹介します。
がん用大麻
大麻は化学療法の症状を緩和すると言っても過言ではありませんが、研究によると、大麻には抗がん作用がある可能性があります。事実、大麻に含まれるカンナビノイドは、ヒトによる実験と動物実験の両方で腫瘍細胞を死滅させることに成功しています。
また、特定のがんは、他のがんよりも大麻に含まれるカンナビノイドによく反応する可能性があります。早期に実施された概念実証試験により、大麻の薬効が化学療法の副作用を緩和する可能性があることが初めて示されました。
Fortuneの報告[10]によると、THCとCBDの両方を組み合わせた医薬品を使用した場合、多形性膠芽腫患者の寿命がプラセボ群と比較して約6カ月延びました。多形膠芽腫は、悪性度の高い脳腫瘍です。この試験は、Sativex社とEpidioLex社のメーカーであるBritish GW Pharmaceuticals社によって実施されました。
がんと大麻については以下の記事で詳しく解説しています。
⇒大麻はがんに効く!?73%のがん専門医が大麻の効果を認識しているが推奨しない理由
PTSD(外傷後ストレス障害)のための大麻
PTSDの恐ろしい症状と闘っている人々に朗報をもたらすかもしれません。THCが含まれている大麻は、悪夢を減少させ、睡眠を促進します。また、それだけではなく、マウスを使った研究では、CBDは恐怖に基づく記憶を変えることがわかりました。
実際、外傷性ショックにさらされたマウスは、CBD投与後に恐怖と不安をほとんど見せなくなりました。
大麻はPTSDに苦しんでいる人たちのための完璧な治療法ではないかもしれませんが、大麻はトークセラピーの結果を改善し、PTSDが精神面に及ぼす影響を軽減するための貴重な薬になるかもしれません。
不安のための大麻
ヴァンダービルト大学の研究者たちは、マウスの脳の感情中枢に、カンナビノイド受容体を発見しました。著者らは、脳の領域である扁桃体にカンナビノイド受容体が、マウスによる実験で発見されたのは今回が初めてだと述べています。
本試験の統括著者であるDr.Sachin Patelはプレスリリースで、以下の様に述べています。
「大麻がどのように行動に影響を及ぼすかを理解する上で非常に重要になるかもしれない」
まとめ
現在、大麻に関する研究は、盛んに行われており大麻産業は急速に発展しています。今回の記事で説明した通り、大麻という植物にはたくさんの人々を救う可能性があるとされ、今後の研究によりさらに適応が広がる可能性があります。
日本でも安価で副作用の少ない「大麻」という植物を治療に使用できる日が来ることを願っています。
【参考】
・[1]Effects of Tetrahydrocannabinol on Melatonin Secretion in Man
・[2]The effects of cannabinoid administration on sleep: A systematic review of human studies
・[3]PubMed:Medical cannabis access, use, and substitution for prescription opioids and other substances: A survey of authorized medical cannabis patients
・[4]Cannabis Gave These Cancer Patients Their Lives Back
・[5]Lancet:Effect of cannabis use in people with chronic non-cancer pain prescribed opioids: findings from a 4-year prospective cohort study
・[6]Cannabinoid-Related Olfactory Neuroscience in Mice and Humans
・[7]Cannabis in cancer patients [CP] to improve quality of life [QOL] and cancer related symptoms [CRS]: Illinois Cancer Care cannabis education and clinical analysis.
[8]PubMed:Cannabidiol inhibits inducible nitric oxide synthase protein expression and nitric oxide production in beta-amyloid stimulated PC12 neurons through p38 MAP kinase and NF-kappaB involvement
・[9]The Health Effects of Cannabis and Cannabinoids
・[10]The Next Big Brain Cancer Drug Could Come from Marijuana
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