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医師・正高佑志

あきらめるのはまだ早い!医師・正高佑志さんが語る日本の大麻政策の問題点。未来のための思考と行動  

日本の大麻政策はいま、一大転換期を迎えている。

大麻草を原料とする医薬品の規制緩和についての検討が進められる一方で、大麻使用罪の創設など“厳罰化”に関する議論も熱を帯びる。

賛否両論、さまざまな意見が交わされるなか、医療用大麻の豊かな可能性を最大限に活用するために、私たちは何を考える必要があるのか。いかなる行動を選択することが求められているのか。

2021年5月に処女作『お医者さんがする大麻とCBDの話』を上梓した、医師で一般社団法人Green Zone Japan代表理事の正高佑志さんにお話を伺った。

CBD製品、大麻に関心を持つすべての人に、科学的知識を伝えたい

−−正高先生は2021年5月『お医者さんがする大麻とCBDの話』を出版されました。この本の概要について聞かせてください。

本書は、2017年から約4年間にわたって書き溜めてきたブログの記事を体系的に編集・加筆したものです。是非手に取っていただきたいのは、CBD製品を実際に使用されている方、販売に携わっていらっしゃる方です。

CBD製品は知識がなくとも容易に流通させることができますが、それぞれのサプリメントにいかなる性質があるのか。どのような病気に使用するといかなる効果が期待されるのか、また、どのような病気には使用するべきでないのかといった科学的知識を学んでいただきたいと思っています。

それから大麻に関心をお持ちの方にも読んでいただきたいですね。大麻による検挙者数が年々増加する中で、身近な人が大麻所持等の容疑で逮捕されたという方も少なからずいらっしゃると思います。私の著書を通して、大麻は決して危険なものではなく役に立つ植物だということ、そして、大麻取締法の改正の必要性を知ってもらいたいと思っています。

ちなみに、初版本の印税は、現在立ち上げを準備している「カンナビノイド医療患者会」の設立及び運営のために寄付する予定です。

お医者さんがする大麻とCBDの話

医療用大麻の規制緩和。大きな前進だが、最初の一歩であることを忘れるな

日本国旗✖️大麻草

−−2021年5月にNHKが報道した、大麻草を原料とする医薬品の規制緩和について、どのように考えていらっしゃいますか。

最近の規制緩和の流れは2019年、公明党の参議院議員で医学博士の秋野公造先生が、大麻草由来のCBDによって構成された”てんかん治療薬”の治験について質問したところ、厚生労働省が前向きな答弁を行ったことから始まりました。

2020年6月には厚生労働省の特別研究班「難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻由来成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究(班長:聖マリアンナ医科大学の太組一朗准教授)」が組織され、私も同研究班に参加して研究報告書を作成。こうした流れを受けて、NHKが、大麻由来の医薬品を解禁の方向で進めるという趣旨の報道を行った次第です。

これら一連の流れは、日本の大麻政策にとって非常に大きな前進であり、微力ではありますが、私自身も規制緩和を後押しできたことを誇りに思っています。ただし、大きな前進であることには変わりはありませんが、最初の”一歩”に過ぎないということを忘れてはなりません。

現在のところ、規制緩和が検討されているのはCBD含有の医薬品のみで、THC含有の医薬品、処方箋医薬品としての認可が下りていない製品については考慮されていないからです。また、CBD製品について治験もまだ始まっていません。今後の成り行きを注意深く見守っていく必要がありますね。

−−現在検討中の規制緩和の中身について聞かせてください。

有識者会議では、茎・種など部位による規制を修正し、THC、CBDといった成分による規制に変更していこうという提案が行われています。主要国のなかで部位による規制を行なっているのは日本と韓国くらいですので、基本的には歓迎すべき動きだと思っています。

流通の枠組みを各国と揃えることで、国境を超えた取引が可能になりますし、医薬品へのアクセスも容易になりますからね。なお、多くの国・地域では、THCの含有量が一定の割合に満たないものはゼロとみなし、”ヘンプ”として一般的な農産物と同様に取り扱ってよいことになっています。

医学的な見地からすれば、THCを許容したとしても、ごく微量であれば濫用や嗜好品として扱われるリスクはあり得ません。心配は無用です。

国際社会の趨勢に逆行する、大麻取締法の厳罰化。基本とすべきは「ハーム・リダクション」

大麻草と手錠

−−医療用大麻に関しては態度を軟化させる一方で、国は大麻使用罪の創設など、大麻取締法の厳罰化を検討しているという報道もありました。これについてはどのように考えればよいでしょうか。

大麻使用罪が創設されると、例えば検尿でTHCが検出されただけで罪に問えるようになります。こうした厳罰化の動きは、国際社会の趨勢に対して逆行していると言わざるを得ないでしょう。世界では「厳罰主義では薬物問題を解決できない」という認識が定着しており、「手錠をかけるよりも、優しく抱きしめろ」というコンセプトのもと、”ハーム・リダクション(二次被害の低減)”と呼ばれる政策が主流になりつつあります。

末端のユーザーを逮捕し、刑務所に入れても、本人の回復につながることはない。それどころか、薬物への依存がますます悪化するケースが多いことが明らかになっているんですね。海外では安全で清潔な注射針の配布といった取り組みが実施され、注目を浴びていますが、日本の現状に即した対策を考えることが大切だと思います。

−−それにしても、なぜ、厚生労働省は大麻使用罪の創設に力を入れているのでしょうか。

プロモーションビデオなどで堂々と大麻を吸っているラッパーやアーティストの存在が、当局にとって歯痒い存在であることは想像に難くありません。ただ、厳罰化の最大の目的は、警察や厚生労働省麻薬取締官(通称マトリ)の”取り締まり利権”の維持にあるのではないでしょうか。

日本における覚せい剤による検挙数は年々減少しており、2018年には一万人を下回りました。こうした傾向が続き、自分たちの仕事がだんだん減っていくことに危機感を抱いているのでしょう。大麻使用罪の創設を推進するとともに、THCを悪者にすることで、取り締まりという仕事の必要性を世の中にアピールしているわけですね。

ちなみに、厚生労働省の有識者会議「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を立ち上げたのは、マトリを所管する厚生労働省監視指導・麻薬対策課で、有識者会議では彼らにとって都合のいい人選を行い、偏った情報のもとで議論が進められています。

−−日本の大麻情勢は今後、どのように推移していくのでしょうか。

大麻使用罪が創設されるか否かが”山場”になると思います。仮にも使用罪が創設されるようなことがあれば、日本の大麻政策はさらに10〜20年の遅れを余儀なくされるでしょう。

ただし、あきらめるのはまだ早い。なぜなら、法律の制定までには数多くのプロセスを踏む必要があるからです。現在、有識者会議を主催しているのは厚生労働省、つまり行政府ですが、法律をつくるのは立法府である国会の仕事です。有識者会議にできるのは「このような法律をつくってもらえると助かります」という提案を出すところまで。

つまり、有識者会議が大麻使用罪の創設を提言するとしても、それはあくまで提言であり、アドバイスに過ぎません。法案の具体的な内容に関する審議を経て、衆参両院で賛成多数を得なければ、法案が施行されることはありません。だからこそ、今、ここで声を挙げることが大切なんです。あきらめたら思う壺です。

−−実際、大麻使用罪の創設に対する反対運動が各地で発生していますね。

ええ。「関西薬物依存症家族の会」は緊急ウェブアンケートを行い、「逮捕や補導、収監によって薬物問題は解決しない」という調査結果を示しましたほか、私の所属する日本臨床カンナビノイド学会でも要望書を取りまとめ、2021年5月24日、反対署名を行った有志の弁護士とともに厚生労働省に提出しました。

また、ツイッター上ではハッシュタグを使ったデモが展開され、トレンド1位にランクインしたこともありましたね。このように大麻使用罪の創設という”一大事”をきっかけとして、さまざまな反対運動がつながりつつあります。一人ひとりの草の根の力により国の政策に影響を与えることができれば、民主主義の実践という意味でも大きな成功体験になるはずです。

「ダメ、ゼッタイ」はゼッタイ、ダメ。情報のバトンをつなぎ、正しいメッセージを拡散しよう

−−日本の大麻政策をより理想的なものへと変えていくためには、どのような行動を起こしていく必要がありますか。

まずは薬物依存の当事者に対する偏見をなくすことです。国や公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターは「ダメ、ゼッタイ」というスローガンのもと、「一度でも薬物を使用するともう回復できない」「人間的・社会的な生活に二度と復帰できない」といった誤ったメッセージを発信し続けています。こうしたメッセージが当事者の自己肯定感や回復への意欲を削いでいるという現実があるのです。

薬物依存の当事者が周囲から”人間ではない”かのような差別を受けて、社会的なポジションが危うくなるのに加え、その家族までもが社会的な生活を営めなくなってしまうケースも少なくありません。まずは「ダメ、ゼッタイ」をやめること。そして、大麻使用罪の創設を阻止することです。

このことは、医療用大麻の将来的な可能性にも関わります。私個人としては、THC成分含有の医療用大麻も使用可能にすべきだと考えていますが、その際、大麻に対するネガティブな印象、潜在的な恐怖心が残っていると、法律が変わったとしても医療用大麻の可能性を十分に活かしきることができません。

実際、オピオイド系鎮痛薬の使用をめぐって、こうした課題が顕在化しています。こうした事例から、もっと学んで然るべきではないでしょうか。

−−最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

私たちが情報発信に力を入れるのは、この国にいい変化をもたらすためです。そのためには皆さんの力が欠かせません。皆さんの半径3メートルにいらっしゃる人たちに本当の話を伝えることで、情報のバトンをつなぎ、拡散していただきたい。これが私どものいちばんの願いです。

【プロフィール】

代表理事/医師
正高 佑志 Yuji Masataka
まさたか・ゆうじ/1985年京都府生まれ。医師。熊本大学医学部医学科卒。在学中よりアジア諸国を中心に周遊し公衆衛生、伝統医療への見聞を深める。2016年カリフォルニア州にてカンナビノイド専門医、Jeffrey Hergenrather氏と出会い、カンナビノイド医療を専門とする事を決意。

Green Zone Japan 公式ウェブサイト

正高佑志先生

大麻合法化関連グッズ専門店 Legalize It!

お医者さんがする大麻とCBDの話

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Kohei

マリファナJP代表のKです。 日本経済に新しいマーケットを誕生させると共に、日本人に大麻の素晴らしさを伝え、1人でも多くの日本人に大麻に対する正しい理解をしてもらえる様に現在活動しております。
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