世界保健機関(WHO)が大麻を規制している国際条約のスケジュール・リスト変更を勧告。世界、日本への影響は?
2019年1月に世界の大麻事情を変えるかもしれない出来事が起こりました。
その出来事というのは、大麻草や大麻樹脂、CBD(カンナビジオール)など大麻関連物質を規制する国際条約のスケジュール変更を勧告したというニュース。
と思う方も多いかもしれません。要するに大麻に関する規制が緩和されたということです。大麻に関する各国の規制は国際条約に基づいて制定していることがほとんどです。
そのため国際条約の大麻規制が緩和されることによって、世界中が大麻の規制緩和や大麻合法化に向けての動きが活発化するでしょう。もちろん日本も例外ではありません。
そこで今回は、WHOの勧告の詳細、勧告による世界と日本への影響を解説してみました。
国際条約とは?
まずは、大麻関連物質を規制する国際条約についてお話していきます。
大麻関連物質を規制している国際条約は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1971年の向精神薬に関する条約(向精神薬条約)、1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)の3つがあります。
スケジュール・リストというのは国際的に薬物統制するシステムのことです。国際条約はWHOのECDD(依存性薬物専門委員会)が定期的に薬物の有害性や医療勝ちについての評価を行い、スケジュール・リストの変更や撤廃などを行っています。
今回の勧告では、1961年の麻薬単一条約および1971年の向精神薬条約のスケジュール・リストが変更となりました。
麻薬単一条約のスケジュール・リスト
1961年に制定された麻薬単一条約のスケジュール・リストは、今回の勧告まで大麻に関しては1度も変更されたことがありません。
その麻薬単一条約のスケジュール・リストは以下の画像となります。
大麻はヘロインやモルヒネなどの違法薬物と同じ等級に分類され、非常に厳しく統制されていました。
向精神薬条約のスケジュール・リスト
1971年の向精神薬条約のスケジュール・リストも今回の勧告まで大麻に関しては1度も変更されたことがありません。
その向精神薬条約のスケジュール・リストは以下の画像となります。
デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール(THC異性体)が大麻関連物質になります。
Δ9-THCは、覚せい剤の別名であるアンフェタミン・メタンフェタミンと同じ等級に分類されています。THC異性体はさらに等級が高く、LSDやMDMAと同じ等級です。
このように、大麻は依存性や中毒性が強い薬物と同じ等級に何十年も位置付けられていました。
WHO国連審査プロセス
国際条約のことは分かっていただけたかと思います。
スケジュール変更などを行う場合は、WHO国連審査というものを行います。この審査は、WHO事務局が2010年に制定した精神作用物質の審査方法の手順に沿って行われます。
国際審査のプロセスは、以下のようになっています。
※CND=国連麻薬委員会
プロセスの詳細を説明しましょう。
第三者による審査の呼びかけ
CNDなどの会議で、該当する薬物の審査の呼びかけが行われます。
事前審査(プレレビュー)
呼びかけにより審査が行われることが決まった薬物は事前審査が行われます。
これは、次のプロセスである批判的審査に進むための十分で確固たる科学的情報(論文や臨床データなど)があるかどうかが判定されます。
批判的審査(クリティカルレビュー)
事前審査を通過した薬物は、批判的審査が行われます。批判的審査は、薬物が国際的な規制(国際条約)のもとに置かれるか、もしくはスケジュール・リストの変更をすべきかどうかを検討するための審査です。
ここで様々な論文や臨床データなどの科学的根拠(エビデンス)が詳細に評価・検証されます。
CNDへの勧告
批判的評価を通過すると、WHOのECDDがCNDに勧告を行います。※今回はこの勧告が発表されたということですね。
CNDの投票
各国の代表者が集められたCNDでWHOの勧告に対しての投票を行うことになります。ここで可決されれば、いよいよ薬物のスケジュール変更や撤廃を行うことができます。
包括・撤廃・スケジュール変更
薬物をまとめる(包括)、薬物をスケジュール・リストから削除(撤廃)、薬物のスケジュール・リストの変更(スケジュール変更)を行い、国際条約を改正します。
今回の勧告の流れ
それではどのような流れで今回の勧告に至ったのでしょうか?発端は、CND決議52/5と呼ばれるものです。この決議で、近年大麻の合法化が進んでいるにも関わらず大麻の健康への影響が最近見直されていないことが指摘されました。
そこでWHOのECDDで大麻及びその関連物質への事前審査・批判的審査が以前から行われていました。そして今回2018年11月12~16日に開催されたWHO依存性薬物専門委員会(ECDD)の第41回会議で審査が終了し、勧告が行われたということです。
勧告の詳細
それでは今回の勧告の詳細を説明していきましょう。今回の勧告内容は、以下のようになっています。
- デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)・麻薬単一条約の付表Ⅰに追加・Δ9-THCが麻薬単一条約に追加されるのを条件として、向精神薬条約の付表Ⅰから削除
- テトラヒドロカンナビノール(THC異性体)・Δ9-THCが付表Ⅰに追加されるのを条件として、麻薬単一条約の付表Ⅰに追加・THC異性体が麻薬単一条約に追加されるのを条件として、向精神薬条約の付表Ⅰから削除
- エキス及びチンキ・麻薬単一条約の付表Ⅰから削除-カンナビジオール製剤・CBDを主に含むΔ9-THC0.2%以下の製剤は、国際規制物質の対象外(国際条約の対象外)
- 合成または大麻由来のΔ9-THCを含む製剤・麻薬単一条約の付表Ⅲに追加大麻及び大麻関連物質の規制等級が緩和もしくは対象外とされ、大麻が健康面で影響が少ないということが定められました。
世界への影響
この勧告がCNDの投票で可決されれば、大麻は他の薬物よりも中毒性や依存性などの害が少なく、医療などに役立つという国際的な証明になります。
現在、アメリカやカナダなどの大麻合法化となっている地域を持つ国は、独自の判断で大麻を合法化していただけで国際的には認められていませんでした。
しかし、今回の勧告にてWHOという国際機関が大麻を認めたということになり、世界各国の大麻に関する法律の改正や撤廃、大麻合法化の流れが加速するでしょう。
日本への影響
もちろんこの勧告は日本への影響もあります。日本は、大麻取締法という法律で、大麻の所持・栽培・輸出入が禁止されています。世界各国が大麻合法化となったとしても、依然、大麻取締法を遵守すれば国際社会から日本が取り残されることになります。
また大麻合法化国から大麻規制の緩和や撤廃に関して何らかの圧力があるかもしれません。そうなれば、日本も大麻取締法の緩和や撤廃を行わざるを得ないでしょう。
すぐに大麻取締法が緩和されることはないでしょうが、医療大麻のみ所持可能・特定の業者のみ栽培可能など少しずつ改正されていく可能性があります。
そしてゆくゆくは大麻取締法が撤廃し、日本で大麻が合法化する時も来るかもしれません。日本で大麻が使える日が来ると良いですね!
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