【大麻の副作用】脳と体に大麻が及ぼす影響

世界各地で合法化が進むにつれ、大麻に関する研究も進歩しています。大麻は、肉体的な痛みからPTSDまで様々な症状に対して有効であることが様々な研究により明らかになっています。

しかし、大麻は、副作用があることも知るべきです。

まだ多くの日本人には、絶望的に誤解されている大麻ですが、人々の誤解を解くための最初のステップは、大麻が全く無害ではないということを認めることです。

今回は、大麻の副作用に関する最も一般的な事例を解説していきます。

大麻については下記の記事で詳しくまとめています。

大麻とは?成分や植物としての「特徴」「効果」「法律」についての【完全ガイド】

大麻は不安感を引き起こすのか?

泣いている男性

大麻は、稀に不安感やパラノイアを感じさせる可能性があります。しかし、一方でPTSDをもつ退役軍人のような人にとっては、鎮静効果があることが知られています。

なぜ他の人が安らぎを感じるのに対して、稀に何人かの人たちは、大麻の副作用が起こるのでしょうか?

向精神作用があり、大麻の主成分の一つである「THC」は、摂取した人には「二相性反応」として知られる反応を示します。

二相性反応とは、大麻は、少量であれば鎮静効果があり、大量であれば不安を感じるということです。

THCが脳に作用すると、扁桃体と呼ばれる領域が影響を受けます。これは逃走反応をつかさどる脳の部分でもあるので、扁桃核が興奮しすぎると、被害妄想や不安感が生じます。

シカゴ大学でボランティア42人を対象に行われた研究[1]では、7.5mg(少量)のTHCを服用した人は、THCを服用しなかった人と比較して模擬面接中の不安が少なく、12.5ミリグラム(多量)のTHCを服用した人はより高いレベルのストレスを報告しました。

とはいえ、誰もが高用量に反応するわけではありません。実際、大麻の効果に関する研究では、頻繁に大麻を使用すると耐性がつくことが示されています。多くの点で、大麻の副作用は、摂取者と体内カンナビノイド系によって異なります。

ヒトの体内には、カンナビノイド受容体が存在することは、研究によって明らかになっていますが、エンドカンナビノイドシステム(ECS)の働きについてはほとんど知られていません。

その結果、大麻の使用後、不安感が高い人は、カンナビノイド受容体を持っていて、他の人よりも刺激を受けやすいという仮説を立てた人もいます。

今回、研究者らは、エンドカンナビノイドシステムが人体に存在することを確認しましたが、私たちのエンドカンナビノイドシステムがどのように機能するかについては、まだほとんど知られていません。

結果として、高THCを摂取し、不安感を経験している人たちは、他の人よりも刺激されやすいカンナビノイド受容体を持っているという結論になります。

2014年、オクスフォード大学、キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学研究所、マンチェスター大学の研究者が「大麻と不安の関係性」についての研究[2]では、喫煙時にパラノイアを報告した個人121人を調査しました。

被験者の5人に1人が大麻の摂取に直接関係するパラノイアを経験したと報告し、プラセボグループ(大麻を摂取しなかった)の30%がTHC(テトラヒドロカンナビノール)と思われるものを摂取している間にパラノイアを経験したと報告しています。

プラセボグループは、二重盲検試験の性質上、自分がハイだと思いこんでいた被験者は、研究者を欺くことさえありました。多くの精神活性物質と同様に、周囲の状況だけでなく、心の状態にも影響を与えます。

これはサイケデリックを研究する人々に 「セット・アンド・セッティング」 と呼ばれています。

セットアンドセッティングは、大麻などの精神活性物質は、感じているものを増幅することができ、その感覚が「安らぎ」であるか「パニック」であるかは、その物質に依存するのと同様に、個人的な精神状態と摂取する物によって完全に左右されてしまうということ。

大麻を吸うことで記憶力の低下や忘れっぽくなるのか?

昔の写真

短期記憶喪失は、おそらく大麻の症状の最も代表的なものの1つです。それは、少なくとも私たちが知る限りずっと前から大麻愛好家たちの間で言われ続けています。

しかし、大麻は本当に記憶喪失を引き起こすのでしょうか?もしそうであれば、大麻による記憶障害は、どれくらい深刻なのでしょうか?

フランスのボルドー大学で行われた研究[3]で、研究者のDr.Giovanni Marsicano氏は、記憶の形成と維持に関係する脳の部位である「海馬の特定のニューロン」が、カンナビノイドの影響を受けるのに必要な「カンナビノイド受容体」を含んでいるため、大麻によって記憶障害が起こる可能性があることを発見しました。

しかし、大麻は記憶を形成する脳に影響を与える可能性がありますが、過去の記憶を消去したり、より深刻な記憶障害を誘発したりすることとは異なると結論付けられました。

このように、大麻はアルコールに似ていて、ハイになり、一時的な記憶障害が起こる可能性があります。このことは、 2013年にSubstance Abuse and Rehabilitation誌に発表された「大麻使用が記憶機能に及ぼす影響」 の研究[4]でも再確認されています。

この研究によって、以下の二点が明らかになりました。

  1. 大麻を頻繁的に使用している人々は、記憶を損なう効果に対する耐性ができる
  2. 記憶喪失は、大麻を使用したばかりの人にのみに現れる

要するに、大麻はハイになっていたときに起こった特定の出来事を忘れやすくするが、大麻を摂取する前後に起こった事や、幼少期の記憶、その他の出来事を忘れることはないでしょう。

このことは、少なくとも私たちが知る限りずっと前から大麻愛好家たちの間で言われ続けています。

大麻は心臓発作を引き起こす可能性があるのか?

肺が痛い男性

心臓に対する大麻の影響については十分に研究されていません。大麻が心拍数に影響を及ぼすことはわかっていますが、この多くは、既に脳卒中などの心臓疾患がある人が大麻を使用していることを自己申告したものとなっています。

New England Journal of Medicineの「大麻の使用による健康への悪影響」[5]によると、大麻の心臓への影響については、さらなる研究が必要ですが、研究者らが現時点で知っているのは、心臓発作と脳卒中のリスクが高い人は喫煙によってそのリスクが高まる可能性があるということです。

これらのリスクが、大麻による直接的なものなのか、燃焼した物質から放出された発がん物質を吸入したことによるものなのかは明らかになっていません。今後の研究に期待ですね。

大麻が若い人の脳に及ぼす影響

脳みそ

次に解説するのは、大麻が若い人に及ぼす影響についてです。

大麻は、まだ発達途中の脳に影響を及ぼすのでしょうか?

合法化に反対している人は、よく次のようなことを言います。

「もっと子供のことを考えて」

これらの懸念の一部は正当です。このことは、大麻の合法化に対する議論にとっても非常に重要です。いくつかの研究は、大麻使用に年齢制限を設けることは、いい考えだと示しています。

この背景にある理由は、脳は成長し、成人期(~25歳)まで発達し続けることが研究[6]によって明らかになっているためです。その結果、一部の医療専門家は、脳の発達を妨げる可能性があるため、大麻の使用を勧めていません。

しかし、ペンシルバニア大学の研究者らが2018年夏に発表した研究[7]「青年および若年成人における大麻と認知機能との関連性」によると、思春期の大麻消費ユーザーは、大麻を摂取することで脳の発達に永続的なダメージを与える可能性があるという主張は誇張されているといいます。

研究者らは以下の様に記しています。

「若者を対象とした大麻に関するこれまでの研究では、使用に関連する記憶障害の大きさと依存性が誇張されていた可能性が分かりました。」

この研究では、1973年までさかのぼり、以前の研究で集められた2,000人以上の若い大麻使用者のデータを調べ、彼らの研究に参加した6,000人以上のボランティアと比較し、実施したテストでは、大麻を摂取した被験者は、摂取しなかった被験者よりも低いスコアを示しました。

しかし、大麻を摂取してから72時間後、ボランティアたちのテストスコアは正常に戻り、大麻使用の長期的な影響は以前考えられていたほど永続的ではない可能性が示唆されました。

将来的には、複数の物質の影響をより完全に把握するために、11,000人以上の小児の健康状態を経時的にモニターする米国国立衛生研究所で現在実施されている「思春期脳認知発達研究」[8]から、さらなる情報を期待することができます。

大麻と精神疾患の影響

悪寒を感じている女性

大麻の副作用の中で最も知られていないのは、精神疾患に対する影響です。多くの大麻ユーザーは、大麻を抗うつ、不眠症などの一般的な治療薬として大麻を使用しています。

2015年[9]と2016年[10]に実施された大麻の精神衛生への影響に関する最近の二つの研究で、心理学者は、大麻が精神衛生に悪影響を及ぼす可能性があることを発見しました。

しかし、これらの研究では、人間関係やその他のストレスなど、精神衛生や病気の原因となりうる他の要因の影響も調査しました。

その結果、大麻よりも環境要因の方が、精神衛生上の問題が生じるリスクがあるかどうかを正確に予測できることがわかりました。

これらの研究結果は、「大麻の頻繁な使用と精神衛生上のリスクに関連性がある」と主張している以前の研究と一致していましたが、大麻が直接的な原因ではないかもしれないことに注目し始めました。

不安感と同様に、大麻の影響は、問題の根本的な原因ではなく、その人の精神状態や環境が引き金になっている可能性がある。」と述べました。

まとめ

大麻に関する研究は、現在盛んに行なわれていますが、まだ始まったばかりです。今後、世界各地で大麻の合法化が進むとともに、さらなる研究結果が出てくるでしょう。

今後の研究に注目ですね。

【参考】

[1]Sciencedirect:Dose-related effects of delta-9-THC on emotional responses to acute psychosocial stress
[2]OXFORD ACADEMIC:How Cannabis Causes Paranoia: Using the Intravenous Administration of ∆ 9 -Tetrahydrocannabinol (THC) to Identify Key Cognitive Mechanisms Leading to Paranoia
[3]EureAlert:Cannabinoids induce memory loss through the decrease in energy of the neurons
[4]PMC:The effect of cannabis use on memory function: an update
[5]THE NEW ENGLAND OFJOURNAL OF MEDICINE
[6]UNIVERSITY of ROCHESTER MEDICAL CENTER
[7]JAMA NETWORK:Association of Cannabis With Cognitive Functioning in Adolescents and Young Adults
[8]NIH:ADOLESCENT BRAIN COGNITIVE DEVELOPMENT STUDY
[9]ScienceDirect:The association between cannabis use and anxiety disorders: Results from a population-based representative sample
[10]JAMA Network:Cannabis Use and Risk of Psychiatric Disorders Prospective Evidence From a US National Longitudinal Study

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Kohei

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