大麻を吸うのは合法?おかしな法律”大麻取締法”の全貌を徹底解説
最近TVやニュースでよく取り上げられる大麻に関する犯罪。
- マンションの一室で大麻栽培をしていたため逮捕
- ラッパーが大麻所持していたため逮捕
- 職務質問中に大麻所持で現行犯逮捕
など様々な罪状により逮捕されていますが、皆さんの中で罪状に関して疑問を感じている人も多いのではないでしょうか?
- 栽培?所持?どっちの罪が重いのだろう?
- 所持と栽培だと、どっちの罪状が適用される?
- 個人使用目的と販売目的だと罪の重さは変わるのかな?
- 海外で大麻を吸ったら逮捕されるの?
そんな疑問を抱いている人も多いでしょう。そこで今回は大麻取締法ができた歴史や刑罰について徹底解説していきます。
大麻が日本で違法になった理由
法律の話が出てきますが、なるべく分かりやすく解説しますのでぜひ参考にしてみてください。
そもそもいつから大麻が禁止になったの?
大麻は第二次世界大戦後の1945年のポツダム緊急勅令に基づく、「ポツダム省令」により禁止されました。その後、1948年に「大麻取締法」が制定され、現在に至ります。
なぜ大麻が禁止になったの?
日本で大麻が禁止になった経緯として、”アメリカ”が大きく関係します。先程お伝えしたように、大麻は「ポツダム省令」により禁止されました。
かんたんに流れを説明します。
- (アメリカ)合成繊維や化学薬品の振興を目的とした「大麻(マリファナ)課税法」が制定
- (アメリカ)大麻を全面的に禁止する「大麻取締法」が制定
- (日本)敗戦により「ポツダム省令」が制定。大麻の使用、栽培が全面禁止になる。
- 麻農家を守るためために、栽培に関する免許制などを採用した「大麻取締規則法」が制定される。
このような感じで日本で大麻が禁止になりました。ようはアメリカは合成繊維や化学薬品の分野を成長させたい。そのためには大麻の規制が必要だと考えたのでしょう。
そして、敗戦国となった日本はアメリカのポツダム省令を受け入れ、禁止となりました。繊維や化学薬品の分野の発展のために、規制された大麻ですが、気づいたら危険な”ドラッグ”として禁止されることになりました。
こうなった経緯にはアメリカで長年続いた禁酒法が関係しています。1933年に10年以上続いていた禁酒法が廃止されたので、それまで禁酒法を取り締まっていた役人や警察が自分たちの仕事を維持するために、新たな禁止対象を探していました。
そこでに大麻に白羽の矢が立ったわけです。こうして大麻は危険な”ドラッグ”であるという認識が広まり、”ドラッグ”の一種であるとして法的に規制されるようになりました。
「日本では今まで約2000年もの間、大麻なんて規制したことがない。そのへんに生えているよ。アメリカは何を言ってるんだろ?」
と言って驚いていた役人もいだそうです。
「大麻は体に害を及ぼす」だとか「ゲートウェイドラッグ」だとかいう主張は完全に後付けされたものです。
日本で大麻が禁止となったもう一つの説
先ほど解説した説が一番有名な説ですが、日本で大麻が禁止となったもう一つの説をご紹介します。
大麻博物館の館長である高安淳一氏は、 The Asia Pacific journalに次の様に述べています。
「アメリカ当局は、戦後、剣道や柔道などの武道を禁止しました。1948年に制定された大麻取締法は、日本の軍国主義を弱体化させるものです。戦時中の大麻産業は、軍によって支配されていたため、大麻取締法は、その力を削ぐために制定されました。」
取締法は、「日本が再び軍事大国になることがないようにしたい」という米国の願望により、作られた政策にすぎませんでした。
実際、日本全体の改革は当時、連合国軍総司令部(GHQ)の総司令官であったマッカーサーに委ねられ、新憲法によって日本が二度と戦争に参加できないようにしました。
当時、ロープからパラシュートまで、あらゆるものを作るうえで麻が重要な役割を果たしたことを考えれば、軍事規制に基づく大麻の禁止は、理にかなっていました。
大麻が禁止された後、日本には25,000以上の大麻農場がありましたが、認可を受けた生産者は、2014年時点では33人にまで減少しています。
大麻栽培の免許は、ほとんどの日本人が知らない歴史の産物です。大麻栽培の免許制は、文化的、経済的に重要だった大麻に対する全面的な制限を防ぐために、当時の人々がアメリカと交渉しできたものです。
自民党は、米国の同盟国が麻薬との戦争を起こそうとしている時に、同様に政策を強化しました。
ニューヨーク・タイムズ紙が1994年に報じたように、1955年から1993年までのすべての選挙で自民党が勝利したのはCIAのおかげであり、当然のことながら、その後、アメリカに有利な政策が続きました。
その結果、日本では、今も無害な植物に対する根強い恐怖が続いています。
大麻は戦前の日本で一般的に吸われていた!?
大麻が禁止になる以前の日本では、大麻はぜんそくの特効薬として販売されていました。また「最も体に害なく喘息を治療できる薬」として、日本中の薬局で売られていました。
大麻取締法の刑罰
日本で大麻が禁止された経緯を理解したところでここからは、大麻取締法の刑罰について解説していきます。
大麻取締法では「所持」、「売買」、「譲渡」、「譲受」、「栽培」、「輸出入」が違法となります。
大麻取締法の不思議な所が「使用」は違法とはなりません。その理由は、昔から大麻は日本人の生活から切っては切れない重要なものだったためです。
大麻の茎は昔から「麻」という繊維で衣料に使われ、大麻の実は「七味唐辛子等の香辛料」として使われてきました。
そのため大麻取締法で「使用」を禁止してしまうと、麻製品を使用する業者、七味唐辛子を販売する食品会社などが違法となってしまいます。
日本人の食生活等に悪影響があるため「使用」だけは違法となっていないということです。
なぜ大麻の使用は罪にならないの?
「使用」は大丈夫で、「所持」「譲渡」「譲受」「栽培」はダメ!って正直訳が分かりませんよね。
これについては様々な理由があるとは思いますが、大きな理由としては、産業用大麻の栽培や利用は日本古来の文化であり、一般的に用いられてきたからではないかと言われています。
実は私たちの身近にも大麻に関係するものは多くあります。例えば、七味唐辛子。
そう、それは麻の種です。もちろん種を食べたところでキマりませんし、発芽したりしませんよ。神社に飾られているしめ縄なんかも、大麻草の茎を利用して作られています。
その昔、日本人は大麻を神様の宿る草として神聖視していました。このように日本人は大麻を古くから様々な方法で利用してきており、現在も国内で産業用大麻を生産しています。
生産者や研究者が微量の粉末などを吸引してしまう可能性はゼロではありません。
その時に「使用」で罰則せざるを得なくなってしまいます。生産者や研究者が微量の粉末などを吸引してしまうのを防ぐために「使用」については罰則規定されてないのです。
大麻取締法の様々な違法行為と罰則
それでは大麻取締法に該当する違法行為と罰則を見ていきましょう。
〇大麻の所持・譲渡・譲受
個人使用目的で大麻を所持・譲渡・譲受は大麻取締法 第24条の2の違法行為となります。
大麻取締法 第24条の2
「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」
この条文に該当すると、5年以下の懲役が課されます。
〇大麻の栽培・輸出入
個人使用目的で大麻を所持・譲渡・譲受は大麻取締法 第24条の違法行為となります。
大麻取締法 第24条
「大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。」
この条文に該当すると、7年以下の懲役を課されます。
〇営利目的での大麻の所持・譲渡・譲受
営利目的(販売目的)で大麻を所持・譲渡・譲受は大麻取締法 第24条の2の違法行為となります。
大麻取締法 第24条の2
「2 営利の目的で前項の違反行為をした者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。」
この条文に該当すると、7年以下の懲役、情状により7年以下の懲役および200万円以下の罰金を併科されます。
〇営利目的での大麻の栽培・輸出入
営利目的(販売目的)で大麻を栽培・輸出入は大麻取締法 第24条の違法行為となります。
大麻取締法 第24条
「2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。」
この条文に該当すると、10年以下の懲役、情状により10年以下の懲役および300万円以下の罰金を併科されます。
※個人使用目的よりも営利目的の方が罪が重くなる傾向があります。
余罪など大麻関連で複数の罪を犯してしまったら?
マンションなどで営利目的の大麻栽培を行った場合は基本的に「営利目的の所持」「営利目的の栽培」などの複数の罪に問われることになります。
この場合、刑法45条前段の併合罪が適用されます。
そのため「所持」と「栽培」という2つの罪を犯した場合は、2つの罪に問われるということです。
ただし併合罪は、懲役刑と禁固刑のみに適応されるため、罰金に関しては適用されません。
併合罪の場合、懲役年数はそれぞれの罪で合計されます。例えば「所持」と「栽培」の場合だと…
〇営利目的の所持:7年以下の懲役
〇営利目的の栽培:10年以下の懲役
となります。
その合計となりますので、最高で7+10=17年以下の懲役を科されることになるというわけですね。
大麻で逮捕された場合は必ず刑務所に入る必要がある?
大麻所持などの場合は、初犯であればおそらく執行猶予がつく可能性があります。
要するに判決後に一定期間経てば、刑務所に行く必要がないということです。
しかし常習性がある、営利目的、所持している大麻の量が多い場合は初犯であっても懲役刑になる場合があります。また再犯の場合はほぼ確実に懲役刑となります。
日本人が海外で大麻を吸ったら逮捕されるのか?
僕もすごく気になっていました。2018年9月カナダで大麻が合法となりました。カナダへは毎年たくさんの日本人が旅行や留学で訪れています。
大麻の合法化に向けて動いている国も増えているいることから、今後日本人が大麻に触れる機会は多くなると思います。海外で自ら購入し、使用する日本人も増えることでしょう。
そこで、みなさんが気になるのは、
ということでしょう。
さて、まずカナダが娯楽用大麻を合法化したことを受け、外務省が発表した日本人向けの注意喚起をご確認ください。
- カナダでは、本年10月17日から、大麻(マリファナ)の所持・使用が合法化されます。
- 一方、日本では大麻取締法において、大麻の所持・譲受(購入を含む)等については違法とされ、処罰の対象となっています。
- この規定は日本国内のみならず、海外において行われた場合であっても適用されることがあります。
- 在留邦人や日本人旅行客におかれましては、これら日本の法律を遵守の上、日本国外であっても大麻に手を出さないように十分注意願います
これを読む限りでは、国内のみならず、海外で所持、譲渡した場合でも大麻取締法適用されると誰もが考えると思います。
大麻取締法に甲南大学法科大学院の教授で弁護士の園田寿氏(66)によると、日本人がカナダで大麻を購入、所持したとしても、カナダ国内でそれらの行動が完結しているならば、「帰国後に大麻取締法が適用されることはないと考えるべきです。」と話しています。
また、その根拠や理由を下記のように説明しています。
大麻取締法に、国外犯規定を設けることで、大麻の取り締まりが国家間の共通利益になると考える日本が、相手国と協調して大麻の取締りに当たるという決意を表明しているのです。
しかし、大麻が合法化されたカナダとは、大麻の取り締まりに関する共通利益は無くなります。
それでも大麻取締法が適用されるようになるのであれば、カナダ在住で大麻を合法的に栽培、所持、使用しているカナダ人が、日本へ観光や留学で訪れた場合、仮に彼らが日本に大麻を持ち込んでいなくても、栽培、所持している証拠さえあれば、大麻取締法違反で逮捕することが可能になってしまいます。
実際に嗜好用大麻を合法化しているカルフォルニアやシアトルなどで大麻を所持したとして、帰国後に日本人が処罰されたケースは全く聞いたことがありません。
園田教授は次のように述べています。
つまり、日本人が大麻の合法な国や州で、大麻を購入、使用したからといって大麻取締法の国外犯規定で逮捕されるというケースはほどんどないと思われます。国外犯規定で日本人を逮捕する場合は、必ず現地の警察の協力が必要です。
しかし、大麻の合法な国や州の警察からすると、自国の法律で既に認められているものを、他国の法律のためにわざわざ捜査するとは思いません。捜査には、お金もかかります。大麻の合法な国や州の警察が協力するメリットもありません。
園田教授の記事は最下部のリンクからご覧になれます。
大麻取締法の国外犯規定
大麻取締法の第二十四条の八に「刑法第二条の例に従う」とあります。この刑法第二条というのが国外犯規定というものです。
(すべての者の国外犯)第二条この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
刑法-電子政府の総合窓口e-Gov
要するに、「刑法第2条の例に従う。」ということは、大麻の取締りは国家を超えた共通の利益を有するから、日本は相手国と協調して大麻の取締りに当たりますよという決意の表明であるわけなのです。
ということはアメリカ(一部の州)やカナダが大麻を解禁したからには、大麻を取り締まることに関してアメリカやカナダとの間で共通の利益はなくなったと言えます。
ですから、カナダが大麻を解禁した以上は、大麻を禁止することについて日本とカナダとの間で共通の利益が存在しなくなったということになります。
この第二条には「すべての者に適用する」と書かれていますが、「すべての者」とは文字通り国籍関係なく「すべての者」を指します。
そうしないと、カナダで大麻を合法的に栽培、所持、使用しているカナダ人が、日本に旅行や留学で訪れた場合、(彼らが大麻を日本に持ち込んでいなくとも!)証拠があれば日本で大麻取締法違反で逮捕・処罰できるということになってしまいます。
要するに、大麻取締法第24条の8に書かれている「刑法第2条の例に従う。」という趣旨は、大麻の取締りは国家を超えた共通の利益を有するので、日本は相手国と協調して大麻の取締りに当たるという決意の表明であるわけなのです。ですから、「カナダが大麻を解禁した以上は、大麻を禁止することについて日本とカナダとの間で共通の利益が存在しなくなった」ということになります。
以上のように、日本人旅行者や留学生がカナダに行って、カナダで大麻を購入したり、所持したりすることは、それらの行為がカナダ国内で完結しているならば、彼らが帰国した後に大麻取締法の適用はないと考えるべきです。
そうしないと、カナダで大麻を合法的に栽培、所持・使用しているカナダ人が、日本に旅行や留学で訪れた場合、(彼らが大麻を日本に持ち込んでいなくとも!)証拠があれば日本で大麻取締法違反で逮捕・処罰できるということになってしまいます。
もちろん、カナダから日本に大麻を送るとか、カナダ土産に日本国内に大麻を持ち込むといった行為は、日本国内での行為ですから、大麻取締法に該当する犯罪行為であることはいうまでもありません。
国外犯規定は、海外で日本人が事件に巻き込まれた場合を想定して作られた法律
極端な例えですがこの法律を解釈すると、アメリカ人がアメリカで大麻を購入した場合にも日本の法律を適用して処罰することができるということ。
とても理解できるものではありません。実は刑法第二条の国外犯規定は、海外で邦人が事件に巻き込まれた場合を想定して作られた法律です。
日本人を守るための法律なんですね。外国で殺人や放火などの重大事件やその他の事件に日本人が巻き込まれた場合、日本の警察が捜査できるよう制定されています。
まとめ「不思議な法律大麻取締法」
大麻は他の薬物と比較すると罰則は軽く、初犯であれば多くが執行猶予とる可能性が大きいです。しかし日本での所持や栽培は犯罪です。これを読んだ人は決して日本国内で大麻に手を出さないでください。
【参考】
マリファナJP 国内最大の大麻総合メディア
大麻に関する正しい知識、正しい情報を発信し、医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻等 多岐にわたり世界中の人々から必要とされている大麻を伝える、日本人のためのメディアです。マリファナJPでは大麻の関連の情報の発信をしていますが、大麻取締法を犯す事を「扇動、教唆、示唆、ほう助」する内容ではございません。日本では大麻の所持、栽培は違法ですので絶対に使用しないでください。
Kohei
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