アグリテック先進国のイスラエルが大麻業界でも最先端を走る理由

国民一人当たりのVC(ベンチャーキャピタル)投資額やNASDAQ上場企業数(米国以外)世界一位のイスラエルは、日本でもITスタートアップ大国として知られています。

 

 

男女ともに兵役のあるイスラエルでは、優秀な学生はインテリジェンス部隊に配属され、そこで培った人脈と高度なスキルを活かしてIT業界でスタートアップで成功するというキャリアが一種のステータスになっており、大企業に就職する人間は”二流”と見做される風潮すらあります。イスラエルでは、年間800-1000社ものスタートアップ企業が生まれており、人口が1000万人に満たない事を鑑みると、その旺盛さが伺えます。

 

 

さて、そんなイスラエルですが、実は食料自給率93%を誇る農業大国としての横顔もあります。

 

「イスラエルの農業は、自然の悪条件との長く苦しい戦い、耕地と水資源の最大限の活用(優れたノウハウとして輸出されるようになった脱塩化工場からの水の利用や、灌漑技術などによって成功を収めました。農業生産の継続的な成長は、農業者と研究者の緊密な協力によって確保され、あらゆる農業部門で新たな手法の開発や適用が共同で進められています。」 (イスラエル大使館)

 

イスラエルは、建国以来、不安定な政情と水資源に恵まれていない事から、テクノロジーにより、国家の安全保障の根幹である食料自給率を上げるという強い動機がありました。

 

 

 

そのため、イスラエルは、アグリテック(アグリカルチャー×テクノロジー)でも世界的なハブとなっており、世界最大級の農産業・花卉園芸・畜産酪農の総合展示会であるイスラエル国際農業技術展では、イスラエルの農業関連企業をはじめ、世界数十カ国からアグリテック・スタートアップ約300社が集結します。

 

1万人あたりの農業輸出額は日本が約47億円なのに対して、イスラエルは約625億円という数字からもその生産性の高さが見て取れます。昨年、住友商事が出資したTranis社は2014年に創業したアグリテック企業。同社は、ディープラーニング技術を用いて発芽情報、害虫疫病被害状況、雑草発生状況などの情報をフォローんでリモート管理するシステムを開発しており、世界各国の農場で利用されています。

 

実は医療大麻の研究のメッカとしての顔も

日本ではあまり知られてはいませんがイスラエルでは50以上のあらゆる機関の研究所で医療用大麻の研究も盛んに行われています。

1992 年に大麻の医療目的の使用を合法化したイスラエルでは、その後大麻の工業製品や化学研究・開発が進みました。保健省医療用大麻局(IMCA) が医療大麻に関する法令の行使権を持っており、IMCA は栽培・抽 出・梱包・流通に関わる様々なライセンスを発行するほか、医療用大麻を処方することのできる臨床医の認定もIMCAが担当しています。2017 年の時点で、4 万人程の患者が医療用大麻を処方されています。

イスラエルは、アメリカが大麻の研究を開始する数十年も前の1963年から大麻の研究に着手しました。研究の中心となったのは、「医療大麻業界のゴッドファーザー」と呼ばれるへブライ大学のラファエル・メコーラム教授。大麻の向精神作用(ハイになる成分)THC(テトラヒドロカンナビノール)と、痛みや嘔吐を緩和する効果が期待され、向精神作用のない成分(CBDカンナビジオール)の化学構造も解明したのも彼の研究チームの功績です。THC、CBDの解明はその後、医療大麻の研究を躍進させるキッカケとなりました。

これらの研究は、大麻産業の基盤を作るうえでも大きなインパクトがありました。大麻に含まれる成分が明らかになったおかげで、お酒が飲めなくてもハイになれるアルコールの入っていない大麻から抽出した大麻ビールやハイにはならずリラックスできるCBD成分のみが含まれたマリファナミルクなどの大麻製品も誕生しました。Forbsによると(リンク)世界の大麻市場は2021年までに約3兆5700億円​規模にまでに達すると予測しています。

「イスラエルの輸出に対する経済的潜在力」によると、イスラエルの医療大麻の経済的潜在力は、年間最大1200億円に及ぶと推計されており、早くから医療大麻輸出を承認したイスラエル政府からは、医療大麻においても世界をリードする意気込みが感じられます。

・大麻テックでも最先端

自動栽培マシーン
From nocamels

日本でも農業従事者の高齢化に伴い、アグリテックは注目を集めています。土を使用せず代りに水に肥料を溶かした水溶液を使って植物を栽培する水耕栽培も日本の農業の未来を考える上で、より重要になってくるでしょう。

イスラエルに拠点を置くSeedo社は、コンテナ内で誰でも簡単に家庭栽培できる自動栽培キットを開発しています。Seedo社のキットは植物の水やり、温度管理、栄養管理、光度調節からウィルスやバクテリアの除去まで、すべてAIで管理されており、完全無農薬による家庭栽培が可能で、ユーザーはスマホアプリで簡単に操作ができます。

 

また、Seedoは世界で初めて全自動で管理された大規模な大麻農場を運営している事でも知られています。アメリカの平均生産数(2017年)は、1400平方メートルあたり約1000キロの大麻を生産することができます。一方で、Seedoのコンテナでは1400平方メートルあたり約3400キロもの大麻を生産できる事からもその生産性の高さが見受けられます。

「我々は、無農薬製品の需要が増加し続ける今日成長の新時代に突入している。」SeedoCEO Zohar Levy氏

生産性の高さのみならず、完全無農薬で農作物が栽培できるという点でも、今後の農業の未来にとって重要なイノベーションと言えるでしょう。

 

まとめ

さて、今回はアグリテックを通じて大麻業界でも世界をリードするイノベーション大国イスラエルについてまとめてみました。

早くから、医療大麻の研究に取り組んでおり、アグリテックの技術を大麻産業にも転用し世界をリードするイスラエルからは多くの事が学べます。日本では、未だに大麻に関してサイエンスベースの議論がなされる事もなければ、アグリテックの観点から大麻産業に参入するベンチャーもありません。

インターネットが生まれた時、日本は、”怪しげで浮ついたもの”程度の認識しかなく、結果、IT業界で日本のプレゼンスは失われる事となりました。いつの時代も、何か新しいものが生まれる時、人々の反応は分かれます。”いかがわしき”大麻産業を前にして、日本は今後どのようなポジションをとっていくべきでしょうか。強烈なベンチャースピリットと好奇心に満ちたイスラエルの大麻関連スタートアップ企業には、”失われた20年”を取り戻すためのヒントが隠されているのかも知れません。

「いかがわしくあれ、新しい文化に立ちすくむな」

                          孫正義

 

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