今回の国連投票は世界の医療用大麻にとって重大な分岐点となる可能性
明日から国連で実施される投票によって医療大麻の価値が暗に認められれば、医療用大麻業界にとっては数十年来の象徴的な勝利となるでしょう。
12月2日から4日にかけて再開される第63回国連麻薬委員会(CND)会合において、ウィーンで主催するバーチャル会議で単純多数が得られれば、1961年の「麻薬に関する単一条約」分類Ⅳから大麻および大麻樹脂を除く旨のWHO勧告が採択される可能性があるのです。
CNDで勧告が採択されれば業界にとって好ましい効果が連鎖的に生じ、世界中で国レベルでの医療利用合法化の動きが促されるとともに、各国が既存の規制を共通化するきっかけともなるでしょう。
投票は12月2日に予定されていますが、決議の過程では遅延や延期も起こり得ます。
問題の提案となる「勧告5.1」は大麻に関係する6件のWHO勧告の一つであり、中でも最も採択の可能性が高いと考えられています。また関連業界にとっては最も重要性の高い勧告だと言えます。
大麻に関するWHO勧告6件の検討結果は次の週に結論が出ますが、最初に内容が公表されてからは既に2年近くが経過しています。
2020年3月の投票予定がCNDメンバー各国に「これら勧告の影響と効果、そして根拠について明確化する」時間を与える目的で先延ばしされたのです。
国連加盟国は6月から10月の間3回の非公式・非公開分科会を経て「期間会合」を開催し、関係者間で経済、法制、行政、社会面に関する意見交換を行なうとともに、大麻に関するWHO勧告の採否を検討して来ました。
勧告5.1
EUと北米、そして南米など複数国の支持を得ているため勧告5.1は賛成多数で採択される可能性があるものの、投票延期の可能性が消えたわけではありません。
この勧告が採択されれば世界中の政策担当者や利用関係者が医用大麻合法化の促進に努めることとなりそうです。
また採択となれば国家レベルで規制見直しの努力がなされる可能性があります。例として米国政府が規制物質法で最も規制の厳しいカテゴリーから大麻を除く、といったように。
他方でこの動きは必要とされる大麻研究を促進して大麻医療の有効性を実証し、合法的な市場の範囲を広げることにもつながります。
現在でも大麻の研究は可能ですが、1961年の国際条約における「分類Ⅳ」の扱いがその妨げとなっているのです。
ただ、国際的な規制緩和を期待すべきではないでしょう。
大麻やヘロインは1961年の条約で「分類Ⅳ」とされるドラッグに相当しますが、これらは最高レベルの国際規制が要求される「分類Ⅰ」にもまた含まれているのです。
そこで採択の成功は実際的というより象徴的なものとなるわけです。
WHO勧告によると、「これら双方の分類に含まれる物質は特に濫用の恐れがあり悪影響を及ぼす一方、治療上はほとんど有用性がない」とされています。
しかし、2019年1月にWHOが科学的根拠を検討した後、WHOはCNDが「分類Ⅳ」から大麻を除くべき理由としてその「治療可能性」を挙げ、「分類Ⅳに属する他の物質に見られるような悪影響が特段認められないと考えられる」ためとしています。
その他の勧告
大麻に関する6件のWHOの勧告は複雑な構成で、明文化された条件とそうでない条件が入り混じった提案もあり、一部については単純多数で採択することができません。
専門的観点でこれら勧告への反対票が投じられたからといって、必ずしも反大麻票というわけではないのです。
一部の国はWHO勧告案を行政上や法制上の影響に基づいて評価し、予期せぬ不確実性が生じうると判断した可能性があります。
例えばCBD(カンナビジオール)に関するあいまいな勧告案は現状変更を嫌う国だけでなく、米国や欧州各国など国連レベルで変更を支持して来た国によっても反対されかねないように見えるのです。
提案では麻から生成したCBDによって向精神性があるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の量を推定する手法について述べ、THC含有率0.2%を基準としていますが、THCの量をどのようにして測定するかは明確にしておらず、混乱を招く恐れがあります。
従ってCBDに関する勧告が否決されたとしても必ずしも麻薬としての認定を意味するわけではなく、また反CBDの立場を意味するわけでもありません。CBD自体は麻薬を規制するいかなる国際条約にも分類されていないのです。
場合によっては、製造品のカテゴリーを国際規制の対象外とする旨補足説明に明記してあったとしても、それがCBD調製時のTHC含有問題を扱う最良の方法だとは考えない国があるかもしれません。
これは米国の立場でもあり、米国は「適当と考える(THCの)基準」については「各国が決められるようにすべき」だと主張しています。
一部の国連加盟国が提案改訂手順上の専門的な理由でCBDに関する勧告に反対票を投じ、WHOに修正案の提出を求めたとしても驚くにはあたらないでしょう。
【参考】
・WHO recommendations on cannabis and cannabis-related substances
・Extract from the Report of the 41st Expert Committee on Drug Dependence
・Cannabis and cannabis-related substances
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