VAPE(ベイプ)って安全?喫煙との比較やVAPE本来の安全性について解説
液体状のリキッドを電気で加熱して発生させた蒸気を吸引して楽しむ「VAPE(ベイプ)」。
従来のタバコよりも害が少ないと言われており、嫌な臭いも残りにくいため若者の間で人気が高まっていますし、禁煙アイテムとして使われることも多いです。
しかし、ニュースなどでVAPE(ベイプ)の有害性について指摘される事例も珍しくなく、安全性については正確に把握できない現状なのではないでしょうか。
そこで今回はVAPE(ベイプ)は安全性なのかというテーマで、喫煙との比較やVAPE(ベイプ)本来の安全性について解説していきます。
VAPE(ベイプ)による蒸気吸引は喫煙よりも害が少ない
VAPE(ベイプ)は、従来のタバコによる喫煙よりも害は少ないと言われています。
理由としては、主にタバコを火で燃焼させることによって生じるタールといった有害物質が心臓や肺にさまざまな悪影響を及ぼすのに対して、VAPE(ベイプ)は液体状のリキッドを加熱して蒸気を発生してニコチンを摂取するため有害物質が少ないと言われているためです。
しかし、「害が少ない」と「無害」は異なります。
いくらタバコよりも害が少ないからといって、VAPE(ベイプ)本来のリスクから目を背けるのは賢明とは言えないでしょう。
①喫煙よりも害は少ないはゼロではない
VAPE(ベイプ)は基本的にタバコによる喫煙よりも害が少ないことが根強く主張されています。
2019年11月に行われたダンディー大学の研究によると、蒸気を吸うことはタバコを吸うよりも血管に与える害が少ない可能性[1]があることが分かっています。
紙巻タバコからVAPE(ベイプ)に切り替えた人の中には、1ヶ月以内で血圧や動脈のこわばりといった血管の健康状態の測定値が改善し始めたという事例もあるようです。
ただし、こちらの研究では、2年以上の喫煙経験があり、1日に15本以上タバコを吸う114人を対象にした研究に止まるため、VAPE(ベイプ)の安全性については、さらに規模を広げた研究が必要となります。
しかし、VAPE(ベイプ)についての有害性を示唆する研究も存在します。
「Environmental Science&Technology」に掲載された2016年の研究では、発がん性物質や刺激物の可能性を含む有害な排出物が蒸気中から特定されました。
ただし、こちらに関しても従来の紙巻きタバコよりもはるかに低いレベルだと言われています。
このように電子タバコは従来の紙巻タバコよりも有害性は低いと考えられているものの、完全に無害であることが証明されているわけではありません。
心臓や血管などの疾患を引き起こす有害な化学物質が大幅に少ないことは分かっていますが、その他の側面に関する健康への長期的な影響については、さらなる研究が必要です。
②VAPE(ベイプ)で禁煙は可能?
VAPE(ベイプ)を禁煙するためのアイテムとして使っている人も多いはずです。
煙を吸っていたのを蒸気に切り替えることで、似たような動作で気を紛らわせながら徐々にタバコを絶っていくという流れで禁煙が行われています。
2019年に行われた「YouGov」の調査[1]によると、イギリスでは360万人以上の成人がVAPE(ベイプ)を使用しており、そのうち54%は元喫煙者であることが分かっています。
つまり、約290万人という人々が紙巻タバコからVAPE(ベイプ)に切り替えて禁煙を成功しているということです。
また、VAPE(ベイプ)は禁煙を助けるための有効なツールになる可能性が指摘されています。
ロンドンのクイーンメアリー大学の研究[2]によると、VAPE(ベイプ)は人々の禁煙を助けるのにパッチやガムといったニコチン置換装置の約2倍の効果を発揮することが判明しています。
これまでさまざまな方法で禁煙を試みるも失敗に終わったという人は多いはずです。
そのような方はVAPE(ベイプ)を使って禁煙に再チャレンジしてみるといいかもしれません。
VAPE(ベイプ)の安全性について知っておくべき5つのこと
VAPE(ベイプ)は、喫煙よりも害が少なく、禁煙のサポートにもなるという研究が報告されていますが、それでも安全性について確認すべきことがいくつかあります。
ここでは、VAPE(ベイプ)の安全性についてのポイントを5つ紹介していきます。
- 喫煙よりも害はないが安全ではない
- 研究でもVAPE(ベイプ)は心臓や肺に悪いことが示唆されている
- VAPE(ベイプ)にも中毒性はある
- 公的な禁煙ツールではない
- 若い世代がVAPE(ベイプ)を使うことの懸念
安全性についてしっかりと認識した上で、VAPE(ベイプ)の利用を検討してみてください。
①喫煙よりも害はないが安全ではない
VAPE(ベイプ)で用いられるリキッドには、ニコチンや香料、その他の化学物質が含まれており、加熱することで発生した蒸気を吸引して楽しみます。
従来のタバコには約7,000もの化学物質が含まれており、その多くは有害と言われていますが、VAPE(ベイプ)にはこういった有害物質は少ないそうです。
しかし、2020年1月21日時点で疾病管理および予防センター(CDC)では、VAPE(ベイプ)患者の60人の死亡と肺傷害を確認しました。
要因としては、粗悪で危険性の高いVAPE(ベイプ)を使用していたことや、闇市場で流通しているTHCが含有されたリキッドが挙げられています。
このため、THC含有のリキッドの使用は非推奨とされており、メーカーが意図しない物質を用いた蒸気吸引も控えるよう指摘されています。
②研究でもVAPE(ベイプ)は心臓や肺に悪いことが示唆されている
日本ではニコチン入りのリキッドがタバコ製品として流通していることはありませんが、海外ではVAPE(ベイプ)でニコチンを摂取することも一般的に行われています。
従来のタバコと同様にVAPE(ベイプ)でニコチンを摂取すると、中毒性を生み出してしまうだけでなく、血圧や心拍数の上昇や心臓発作のリスクも高めてしまいます。
とある研究では、蒸気摂取による慢性肺疾患および喘息、心血管疾患との関連を示唆するデータも出ており、私たちがまだ知らない長期的な健康への影響が懸念されています。
③VAPE(ベイプ)にも中毒性はある
VAPE(ベイプ)にもニコチンが含まれている以上、使用によって中毒性を引き起こす可能性は十分に考えらるでしょう。
さらに、リキッドによってはよりニコチンの濃度の高い製品を手に入れることもできるため、中毒症状に対する懸念が広まっています。
④公的な禁煙ツールではない
VAPE(ベイプ)が禁煙を助けるツールとして有効性を示すデータはありますが、公的な禁煙ツールとはいえません。
中には、禁煙目的でVAPE(ベイプ)を始めたものの、結局VAPE(ベイプ)と紙巻きタバコを両方使い続けるようになった人もいるようです。
どの禁煙ツールが合うかは個人差もあると考えられるため、メリットとデメリットなどを考えた上で自分に合う禁煙プログラムを選ぶ必要があるでしょう。
⑤若い世代がVAPE(ベイプ)を使うことの懸念
VAPE(ベイプ)は見た目のおしゃれさや臭いが残らない点、さまざまなフレーバーがラインナップされているなどから若い世代の人気を獲得しています。
2015年、アメリカの外科医総長は高校生のVAPE(ベイプ)が900%増加し、若いVAPE(ベイプ)ユーザーの40%が従来の紙巻きタバコを吸ったことがないと報告しました。
また、蒸気を吸うことが喫煙よりも害が少ないと信じられており、紙巻タバコよりも低コストかつ、フレーバーの多様さが若者に支持されていると指摘しています。
しかし、「紙巻タバコからVAPE(ベイプ)に切り替える」のと「VAPE(ベイプ)でニコチンの使用を開始する」のでは意味合いが異なるでしょう。
若いうちからVAPE(ベイプ)の使用を開始した結果、将来的に紙巻きタバコを使用するようになるといった懸念もあります。
まとめ:VAPE(ベイプ)の安全性を確認してから利用しよう
VAPE(ベイプ)について、紙巻タバコとの比較やVAPE(ベイプ)本来の安全性について解説していきました。
確かに、従来のタバコ製品よりも有害物質は少なく、身体への健康被害は少ないという主張は妥当性の高いものではあるものの、VAPE(ベイプ)については長期的な研究データがないため、将来的にどのような影響を及ぼすのかが明らかになっていません。
商品や使用方法によって、身体に有害な影響を与える可能性もあるので、「VAPE(ベイプ)は無害」と安易に信じ込むのではなく、リスクを常に検討しながら取り入れてみてください。
【参考】
・[1]HERAT MATTERS:Is vaping safe?
・[2]Patient:The truth about vaping
・A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy
・JOHMS HOPKINS:5 Vaping Facts You Need to Know
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