大麻がHIV患者の脳の劣化を保護する可能性

「HIV（ヒト免疫不全ウイルス）」と「老化」には一つの共通点があります。それは、どちらも神経系に回復不能なダメージを与えることです。

HIVと老化は、中枢神経系に対する有害な作用を引き起こし、神経認知障害(NCI)のリスクを高めます。

しかし、大麻は、脳の劣化に関係する、老化とHIVの両方を抑制する可能性があることが分かりました。

今回は、大麻がHIV患者の脳を保護する可能性があることについて解説していきます。

HIV（ヒト免疫不全ウイルス）とは？

HIVとは、Human Immunodeficiency Virus（ヒト免疫不全ウイルス）の略で、ヒトの体をさまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体から守るのに非常に重要な細胞である、Tリンパ球やマクロファージ（CD4陽性細胞）などに感染するウイルスです。

CD4陽性細胞が減り続けると、体の免疫機能を維持することが難しくなり、免疫力が低下していきます。治療を施さなければ、免疫力は徐々に低下し、一般的には5～10年でAIDSを発症すると言われています。

大麻を使用しているHIV患者は、認知機能の低下が大幅に減少？

Journal of Acquired Immunity Deficiency Syndromeに最近発表された研究によると、大麻を使用しているHIV患者は、大麻を使用していないHIV患者と比較して「認知障害が大幅に少ない」ことが分かりました。

・研究者らは、HIVに感染している679人とHIVに感染していない273人のデータを収集
・参加者の年齢は18歳から79歳

研究者らはその後、各参加者を以下の項目で評価しました。

・脳がどの程度機能しているか
・全般的な健康状態
・現在どのような種類の薬を服用しているか

その結果、HIV患者で大麻を頻繁に使用している患者は、HIVに感染していない人と比べても、認知障害を発症するリスクが53%低くなることがわかりました。

現代医学では、まだ治療法が見つかっていないHIVに、大麻がどうやって大きな影響を与えているのでしょうか?

研究者らは、以下の様に指摘しました。

HIV関連認知障害(HAND)とは？

また、HIVは、人間の免疫細胞を攻撃しますが、神経変性を引き起こすことがあります。脳内にHIVが存在すると、ウイルスと免疫細胞の両方から放出される毒素によって炎症が引き起こされます。

人のニューロンは、非常にもろく、脳内の恒常的な炎症により、これらのニューロンは退化し、最終的には死滅してしまいます。HIVウイルスによるニューロン損傷によってHIV関連認知障害(HAND)が引き起こされます。

HIV関連神経認知障害（HIV associated neurocognitive disorder）は、HIV感染症に伴う認知機能障害のことを指し、以下が主な症状となります。

• 集中力の低下
• 記憶力の低下
• 転びやすくなるなどの運動障害
• 怒りっぽくなる、攻撃的になる、無感情になる、自発性が低下するなど性格の変化

HANDが進行すると、AIDS認知症複合体(ADC)に発展

HANDがさらに進行すると、AIDS認知症複合体(ADC)に発展する可能性が高まります。ADCの最終段階では、パーキンソン病とアルツハイマー病の両方のような状態で、どちらも通常は高齢者にのみ影響します。

ADCの最終段階では、植物状態に陥り、人と会話ができなくなります。

しかし、近年、米国などの先進国では、HIV治療薬（抗レトロウイルス薬）が容易に手に入れられるため、HIVがエイズ(AIDS)に発展するのを防ぐことができます。

まとめ

HIV治療薬でも治療は可能ですが、大麻は、いくつかのHIV/AIDS症状を抑制することが知られているため、標準的なHIV/AIDS医薬品として大麻を認定すべきだという議論が広がっています。

今後の研究に期待ですね。

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