大麻の非犯罪化への道 「なぜ大麻で逮捕するのですか?」著者 長吉秀夫さんインタビュー
大麻は日本も含めまだ世界の多くの地域で【大麻=薬物】として扱われていますが、一方でいくつかの国では大麻の間違った取り扱い方を見直しされ始めています。
舞台制作、出版プロデュース、音楽制作、作家活動の長吉秀夫さんは昨年、伊勢谷友介さんが逮捕されたのがきっかけで「なぜ大麻で逮捕するのですか?」の出版を決意。
また、一般人が麻薬特例法のあおりで、ネットで大麻を表現しただけで逮捕され、実名報道までされたことに衝撃をうけたことも出版した理由の一つです。
今回のインタビューでは、大麻に関心を持ったきっかけから、日本における大麻非犯罪化のメリット、合法化までの流れまでさまざまなテーマについてお話を伺いました。
【プロフィール】
長吉秀夫
1961年12月26日 東京都生まれ 明治大学卒業
1980年から舞台制作者として活動を始め、1987年に制作株式会社ヘッドロックを設立。舞台制作、出版プロデュース、音楽制作、作家活動を開始。
大学在学中に、舞台制作者として、内外の「民俗音楽」「舞踊」や「ロック」と出会い、全国津々浦々をツアーする日々が続く傍ら、ジャマイカやインド、ニューヨークなどの国々を訪れながら、「大麻」や「ドラッグ」「精神世界」「ストリート・カルチャー」などを中心にした執筆を行い、現在はフリーとして活動中。大麻解放運動も行なっており、全国で講演会やイベントを開催している。
長吉秀夫さんが出版した「なぜ大麻で逮捕するのですか?」はこちら
大麻との出会い
まず初めに自己紹介をお願い致します。
長吉秀夫(ながよしひでお)と申します。1961年東京生まれです。主にノンフィクションを中心に書籍を執筆しています。その中でも大麻関連の本が多く、気がついたら10冊ほど出版しています。
30年ほど前から、大麻問題についてのセミナーやイベントなどもおこなっています。
長吉さんが大麻に関心を持つようになったきっかけを教えてください。
初めて大麻を吸ったのは17歳の時(1978年)ですが、19歳の時に経験した時のビジョンがあまりに素晴らしかったのがきっかけです。当時はインターネットもなかったので、書物や人づてに大麻の情報を集めていました。調べるにつれ、こんなにいいものがなぜ禁止されているのかということに強い疑問を感じていました。
また、当時発生したエイズ(HIV)による、世界的なパニックも大きな原因です。エイズに大麻が有効だということがわかり、サンフランシスコを中心に大麻解禁運動が始まったことに、強い影響を受けました。
日本人が大麻を受け入れられるようになるには
日本では大麻に対してネガティブな意見を持っています。長吉さんは大麻に対してどのような考えをお持ちですか?
僕自身は、大麻を物凄くポジティブにとらえています。医療や嗜好、衣食住、エネルギーなど、ひとの生活全般にこれほど有益な植物はありません。大麻を有効利用することにより、ひとの社会が豊かになるだけではなく、地球環境の問題にも貢献すると考えます。
大麻をドラッグと位置付けることには反対です。大麻はハーブです。もしも大麻がドラッグであるならば、他のドラッグと決定的に違うところが一つあります。
それは、摂取すると健康になってしまうという点です。日本社会がかたくなに大麻を否定する側面のひとつは、事実と知っていながら社会自体がその考えを修正できないというところでしょう。
これは大麻問題だけではなく、日本社会全体にある傾向であり、日本社会のウィークポイントです。大麻を受け入れるには、社会が成熟する必要があります。現代日本はあまりにも稚拙です。僕は、大麻問題は社会の成熟度を図るリトマス紙だと考えています。
日本人が大麻を受け入れられるようになるにはどうすれば良いと思いますか?時の経過を待つしかないのでしょうか?
やはり、日本社会が大麻は安全な物質であるという認識をもつことが重要でしょう。その大きなきっかけは医療大麻の合法化だと思います。2020年12月に国連麻薬委員会(CND)は、大麻及び大麻樹脂を附表Ⅳである「最も危険で医療価値がない」というカテゴリーから削除し、大麻に医療価値があることを認めました。
このことにより、大麻を規制している国際条約「1961年の麻薬に関する単一条約」が改定されます。これによって日本でも、近い将来に大麻及び大麻由来製剤の使用が合法化されるでしょう。そうなった段階で、大麻に対する社会の評価が大きく変わると予想されます。この時点で、大麻に関する正しい知識をいかに広めていけるかが重要だと思います。
一方で懸念されるのは、医療使用が可能になったとしても、大麻や大麻製剤が医療機関によってモルヒネなどと同様に扱われるのみで終わってしまうというケースです。実際に韓国では、現在はそのような状態です。
僕は、大麻を医療機関で使用するのと同時に、アロエなどと同様に自宅で栽培して使用する「民間薬」という位置づけにするのがベストだと考えます。そのためには、「非犯罪化」を経て、次の段階に移行していくのがよいと思っています。
もちろん、法改正が行われることが望ましいですが、果たして日本の立法府がそこまでスピーディに対応するかというと難しいのではないでしょうか。そのような理由から、現時点では先ずは非犯罪化が現実的ではないかと考えているのです。
また、現在注目されているCBDの扱いもひとつのきっかけとなると思います。日本の法律では、CBDは大麻取締法で合法とされている茎から抽出したもののみとされています。そこを今後、厚労省はどのように解釈するのかというのもポイントです。
そこを今後、厚労省はどのように解釈するのかというのもポイントです。米国はTHCが0,3%、EUは0,2%以下の大麻草を、産業用大麻(ヘンプ)として規制対象から外しています。そのため、産業用大麻(ヘンプ)から抽出した高CBDのオイルも、THCが含まれているとしても規制されません。
日本も同様な法改正ができるのであれば、産業用大麻(ヘンプ)の花穂から抽出されたCBDは合法となります。しかし、花穂から抽出されたCBDが「医療大麻」として扱われてしまうと、現在のようなCBDの流通は違法となり、医療機関でしか扱うことができなくなる可能性も出てきます。CBDをどのように扱うかについては、世界的にも明確なルールは確立されておらず、各国が様々な対応をしています。
このように、大麻の扱いには複雑な事情が折り重なっています。そのため、僕たちが社会に対して訴えたり法廷で主張するなど、粘り強い行動を継続していくことが必要だと思います。
大麻の非犯罪化が合法化への重要なプロセスの一つ
著書「なぜ大麻で逮捕するのですが」を出版されようと思われた理由について聞かせてください。
昨年、俳優の伊勢谷友介さんが逮捕されたことがきっかけです。さらに、一般人が麻薬特例法のあおりで、ネットで大麻を表現しただけで逮捕され、実名報道までされたことに衝撃をうけたこともひとつです。
また、WHOは既に大麻には重篤な害はないという科学的な見解を示しているにもかかわらず、12月の国連の決議では医療用の価値しか認めず、相変わらず大麻を有害だとしていることにも疑問をもちました。
つまり、大麻の害は科学的な見解によるものではなく、政治的・経済的な人為的なものだということがはっきりしたのです。このことも、この本を出版した動機です。
何故大麻合法化ではなく非犯罪なのでしょうか?
非犯罪化は通過点であって、最終目標は大麻の合法化です。しかし、法律を廃案するまでは、まだ年月がかかるでしょう。日本の社会構造を鑑みると、最終目標にいたる前に、先ずは逮捕させないという行政的なところから着手するのがベターだと考えています。
行政執行を直ちに中止することで、不必要な逮捕者を出すことが回避できると考えます。その上で、少なくとも先進国並みの量刑や法整備を準備し実行することができます。そのような事から、先ずは非犯罪化すべきであるというのが僕の主張です。
大麻取締法の行政執行を中止するにはどのようなプロセスが必要ですか?
行政執行を停止するには、政府の指示によっておこなわれるのが最も早い流れです。これは、立法府である国会によって法改正を行うよりも遥かに簡単な手続きで済みます。もちろん、簡単といっても現状をみると並大抵のことではありません。
しかし、人道的立場からの民間薬の使用や人権問題として訴えることにより政府を動かすことができれば、実現は可能です。地方自治が発達しているアメリカの場合は、市の行政レベルで逮捕の手続きを行わないなどの行動が可能でした。しかし日本では、都道府県レベルでそこまで判断し行動するというのは現実的ではないかもしれません。
ここ数年、今までは検察によって大麻取締法違反者が起訴されていたケースが、不起訴になる場合も見受けられます。逮捕状を請求する検察や、それを発行する裁判所の判断も少しずつ変化しているようにも見受けられます。これらの動きも、非犯罪化へのプロセスのひとつではないかと思います。
日本で大麻を非犯罪化するした場合、どのようなメリットがありますか?
非犯罪化することで、何よりも大麻による逮捕者のその後の人生へのダメージをなくすことができます。また、年間3000人にのぼる逮捕者にかかる、捜査や勾留費用に使われる税金を削減することもできます。
逮捕すると、捜査や裁判などで一人200万円くらいはかかると聞いています。単純計算で6億円です。さらに、厚労省の麻薬取締官や担当する警察官の人員削減にもつながります。非犯罪化することによって、日本社会が持つ大麻へのネガティブなイメージが弱まり、医療利用や民間利用への道が広がっていくと考えます。
間違った法律を正しく改めることも国民の義務
最後に読者にメッセージをお願い致します。
大麻についての世界情勢は急速に変わっています。それはネットなどの情報でも容易に知ることができます。それをただの知識として持つだけではなく、それによって日本社会を豊かにすることが必要だと、僕は考えます。
日本の大麻取締法には様々は問題点があります。「悪法も法なり」などと放置するのではなく、法律を正しく改めることも国民の義務です。
この本は、法律家やジャーナリストや医師など、各界の専門家からの意見を聞いています。これを読むことで、皆さんが大麻問題について考えるきっかけになればと思っています。
長吉秀夫さんが出版した「なぜ大麻で逮捕するのですか?」はこちら
【プロフィール】
長吉秀夫
1961年12月26日 東京都生まれ 明治大学卒業
1980年から舞台制作者として活動を始め、1987年に制作株式会社ヘッドロックを設立。舞台制作、出版プロデュース、音楽制作、作家活動を開始。
大学在学中に、舞台制作者として、内外の「民俗音楽」「舞踊」や「ロック」と出会い、全国津々浦々をツアーする日々が続く傍ら、ジャマイカやインド、ニューヨークなどの国々を訪れながら、「大麻」や「ドラッグ」「精神世界」「ストリート・カルチャー」などを中心にした執筆を行い、現在はフリーとして活動中。大麻解放運動も行なっており、全国で講演会やイベントを開催している。
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Kohei
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